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出雲神話とゆかりの地

大国主神(オオクニヌシノカミ)の物語とゆかりの地

因幡の素兎(いなばのしろうさぎ)神話

出雲大社にある因幡の素兎像

隠岐国から因幡国へ渡りたくて仕方のない兎がいました。

兎は思いつきます。

「そうだワニ(鮫)の背中を渡って行こう!」

そこでワニたちに「兎とワニでは、どっちが多いのかなぁ?」と聞きます。 それを聞いたワニたちは「そりゃぁ我々、ワニが多いだろう」と答えます。 「じゃぁ僕が数を数えるから、因幡国まで一列で並んでよ」と兎。 海に出来たワニの道を、ワニの数を数えながらピョンピョンと跳ねて行きます。

でも、因幡国に渡りきる際に「しめしめ、これは上手く騙せた」と言ったのが、ワニに聞こえてしまい、怒ったワニたちに皮を剥がされてしまうのです。

そこを通りかかった大国主の兄弟たち、その兎を見てこう言います。

「これはこれは可愛そうに、海水で体を洗い、風に当たっておれば治る」と。

もちろんこんな治療では、キズが治る訳もなくどんどん痛くなるばかりです。 その後、そこを通りかかったのが大国主神(オオクニヌシノカミ) です。

「真水で体を洗い、蒲の穂綿に包まれば治る」

と教えてやります。言われた通りにした兎は、キズも治りもとの兎の姿になりました。 ここまでが神話「因幡の素兎」です。

実はこの話は、オオクニヌシノカミの兄弟神たちが因幡の美しい姫神「八上比売命(ヤガミヒメノミコト)」に求婚するために因幡国を訪れた際のお話。 オオクニヌシノカミは兄弟神たちの荷物持ちとして同行させられていたのです。 オオクニヌシノカミに助けられた兎はこう告げます。

「ヤガミヒメノミコト様は、心優しい貴方様をお選びになるでしょう」

兎のお告げ通りにヤガミヒメノミコトとオオクニヌシノカミは恋に落ち結ばれます。 が、この後にオオクニヌシノカミには厳しい試練が、ヤガミヒメノミコトには悲しい現実が待ち受けているのです…

ところで… 「白兎」じゃなくて「素兎」なの?と思った人もいるはず!

この神話に登場するウサギは野うさぎであったため、「素兎」という字が当てられています。実は白うさぎではなく茶色のかわいいうさぎだったのです。

一般的に絵本の挿絵などは白が殆どですよね?! どちらにしても、さめとは違ってかわいいうさぎだったことには違いないです♪


根の国神話(ねのくにしんわ)

恐ろしい兄弟神の嫉妬

ヤガミヒメノミコトとオオクニヌシノカミが結ばれたことを知った兄弟神は怒り心頭、嫉妬にかられた挙句にオオクニヌシノカミを殺そうとまで考えます。

因幡国からの帰り道、伯耆の国で「この山に大きな赤い猪がおる、わしらは山から追ってくるので、お前は下でそれを捕まえろ!逃したら殺すぞ!」と言われたオオクニヌシノカミ、山の麓で猪を待っていると大きな赤い物体が?!

「猪だ!」

そう思ったオオクニヌシノカミは、それを抱きかかえ捕まえますがそれは猪ではなく、兄弟神が山上で焼いた真っ赤な大きな岩でした。 この大火傷でオオクニヌシノカミは死んでしまいます。

あたたかい母の愛に助けられるオオクニヌシノカミ

奥出雲の雲海

これを知った母神「刺国若姫命(サシクニワカヒメノミコト)」が天上の「神産巣日之命(カミムスビノミコト)」にお願いをして、赤貝の「蚶貝比売(キサガイヒメ)」と蛤の「蛤貝比売(ウムギヒメ)」を遣わし治療をさせると、オオクニヌシノカミは元通り元気な体になられたそうです。

これを見た兄弟神たち、事が失敗したことを知ると直ぐに次の策を考えます。 今度は山中深くに騙して誘い、大きな木に挟み殺してしまいます。 このときも母神が生き返らせますが、このままだと本当に殺されてしまうことを心配し、 紀伊国の「大家毘古之神(オオヤビコノカミ)」の元へ逃がしました。

ところが、兄弟神たちはそんなことでは諦めません。 紀伊国まで追いかけ殺そうとします。 ここまでする兄弟神を見た母神は「須佐之男命(スサノヲノミコト)」がいる「根の堅州国(ねのかたすくに)」へ逃げる様にと伝えます。 そして、根の国に渡ったオオクニヌシノカミはここで、ある女神と運命的な恋に落ちるのです…


試練の数々と夫を支える内助の功

根の国に渡ったオオクニヌシノカミは、そこで美しい姫神でスサノヲノミコトの娘神「須勢理毘売命(スセリビメノミコト)」と恋に落ち結ばれます。

ただ、オオクニヌシノカミがどうにも気に入らないスサノヲノミコトは、オオクニヌシノカミに様々な試練を与えます。

最初の試練は「蛇がたくさんいる寝室で寝る」でした。 大事な彼氏に何かあっては大変と、スセリビメノミコトは「蛇が襲ってきたら、この領巾(ひれ)を三回降れば大丈夫」と言い、呪力を持った布を渡します。これでオオクニヌシノカミは無事に一つ目の試練をクリア。 次は「ムカデとハチがたくさんいる寝室で寝る」でしたが、これもスセリビメノミコトの計らいでクリアします。

結婚するため試練に立ち向かうオオクニヌシノカミは肉食系男子?

与えた試練を次々にクリアするオオクニヌシノカミを見たスサノヲノミコト、次は広い野原に向かって矢を放ちます。 「あの矢を拾ってこい」と命じ、オオクニヌシノカミが野に入るとスサノヲノミコトその野原に火を放ったのです。

オオクニヌシノカミが「もはやこれまで」と諦めかけると、ネズミが現れ「中はほらほら、外はすぶすぶ」と告げ、地面の下に空洞があることを知らせます。オオクニヌシノカミが足元をドスンと踏むと、空洞がありその中でどうにか炎をやり過ごし助かります。 さらにそのネズミはスサノヲノミコトが放った矢を探してきてくれました。

それを知らないスセリビメノミコトは、オオクニヌシノカミが死んだと思い、泣きながら葬儀の準備をしていました。 もちろんスサノヲノミコトも「これでさすがに死んだだろう」と思っていました。

そのとき、手に矢を持ち現れるオオクニヌシノカミ! しかしそれでもまだ、スサノヲノミコトは試練を与えます。 なんと厳しい義父なんでしょう…

駆け落ちする大国主神と須勢理毘売命

宍道湖の夕日

スサノヲノミコトはオオクニヌシノカミを広い寝室に招き「ワシの頭のシラミを取れ!」と命じます。

が、スサノヲノミコトの頭にはシラミではなくムカデが… そこにまたまたスセリビメノミコトが現れ、ムクの実と赤土を渡しました。オオクニヌシノカミはこれを口に含んで吐き出しを繰り返します。

これを見たスサノヲノミコトはムカデを口の中で噛み潰していると勘違いし、感心します。

心を許したのか、眠気に勝てなかったスサノヲノミコトはそのまま眠ってしまいました。 眠りこけるスサノヲノミコトを見たオオクニヌシノカミ。 「ここぞチャンス!」とばかりに、スサノヲノミコトの長い髪を部屋の大きな柱に結びつけ、大きな岩で入口を塞ぎ、スセリビメノミコトを背負い逃げだします。

その手にはスサノヲノミコトの宝物の太刀、弓矢、琴を持って…

「やれやれこれで逃げ出せた」と安心したその時、手にしていた琴が木にあたり、大きな音が鳴り響きました。 この音を聞いたスサノヲノミコト、慌てて飛び起きましたが柱に結びつけられた髪が邪魔で追いかけられません。

その間にどんどん逃げるオオクニヌシノカミ、髪を解いて追いかけるスサノヲノミコト。

地上との境まで追いかけたスサノヲノミコトは、オオクニヌシノカミに向かってこう叫びました。

「お前が奪った太刀と弓矢で兄弟神を追い払い、スセリビメノミコトと結婚し大きな宮殿を建てて住め!」

スサノヲノミコトはついにオオクニヌシノカミに、この大国の大王になれといい、試練に打ち勝った娘婿と認めたのです。 愛娘の旦那様となるオオクニヌシノカミへのはなむけの言葉?最後まで厳しい義父のままのスサノヲノミコトでした。


三角関係の結末は

湯の川温泉ヤガミヒメの像

れで、オオクニヌシノカミはスセリビメノミコトを正妻とし、出雲の国造りを始めます。

しかし、最初に結ばれたはずのヤガミヒメノミコト、そんな現実を知るわけもなく… オオクニヌシノカミの子を身ごもったヤガミヒメノミコトは臨月が近付いたので、愛しのオオクニヌシノカミに会うため、因幡国から出雲国を訪れます。

長く険しい旅の道中、宍道湖を船で渡る際に山あいに湯気が立ち昇るのを見つけた姫は、そこに温泉があることを知ります。 その湯が日本三美人の湯の一つ「湯の川温泉」です。

この湯に浸かり、長旅の疲れを癒された姫はいっそう美人神になられたと伝えられています。

しかし、出雲国で知った悲しい事実。

ヤガミヒメノミコトは嫉妬深い性格のスセリビメノミコトを恐れ、泣く泣くオオクニヌシノカミを諦め因幡国へ。 帰りの道中に産気づき、出産しましたが、その御子神は木の俣にかけて置いていかれたそうです。 愛する旦那様を諦め、最愛の我が子を手放し、身も心も疲れ果てた姫は、帰り際再び湯の川温泉の湯に浸かられ、傷ついた心と身体を癒されたということです。

「火の山の ふもとの湯こそ恋しけれ 身を焦がしても妻とならめや」

湯の川温泉で傷心の姫の心をなぞらえて詠んだ歌です。

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